新人海外研修

入社前の新人研修の一環として、海外工場視察を行っている白龍堂。入社前という早い段階から国際感覚を身に着け、グローバルな目線の育成を目指しています。2017年研修ではベトナムと台湾を訪問し、ユニフォーム製造工場や染色工場、織工場などを見学しました。

機能性ユニフォームの裏に「工夫」

ホーチミンのユニフォームの製造工場では、各所に「工夫」を感じることができた。まず第一には、縫製不良の報告が、従業員が必ず通る場所に写真の貼り出しという形で共有されていたことだ。文字だけでは詳しく分かりにくいが、写真を貼り出すことで誰でも一目でわかりやすく、印象に残りやすい。新たな報告にもすぐに気づくことができるだろう。ひとりが同じミスをしないように気を付けるだけでなく、全体で共有することで意識的に取り組むことができる「工夫」だと感じた。
もう一つは、難しい襟の縫製に関する「工夫」だ。粘着テープのついた紙に襟となるパーツを上下に貼り付け、紙の上下の端を重ねるように折り畳み、あらかじめ縫い目分に開けられた紙の穴に沿ってミシンをかけると、ずれることなく綺麗に縫い合わすことができるというものである。この「工夫」は機械などのようなハイテクな技術では決してないが、多くのメリットを生んでいるだろう。ラインでの生産において、難しい縫製箇所に時間がかかるほど、全体の納期が遅れることも今回の見学で学んだことであるが、この工夫は、襟の縫製の効率と生産スピードを上げることで、全体の生産効率にも関わっているといえる。それだけでなく、特定の技術者に頼ることなく、またマチ針での固定と違って、針の抜き忘れのようなミスが起こる心配もなく、生地に余計なダメージを与えることもないだろう。こうした多くのメリットを生む「工夫」が、紙の装置自体はきっと私でも作れるような、ハイテクでないものによって成り立っていること、つまり技術やテクノロジーというよりも、ひとつのアイディアによって全体の生産効率が大きく上がっていることに、感動のような驚きを感じた。アイディアは技術に勝るのだと、強く感じることができた。

機械化と人の作業

また、各工場で特に気になったことのひとつが、「人の手で行う作業と機械化すること」だ。現代の技術社会のなかで、特にこういった製品製造の場面ではどんどん機械化していっているのだろうと考えていた。しかし実際にいくつかの工場を見学していく中で、「人の手」による作業も多く残っていることを発見した。縫製工場では、裁断前の生地を重ね合わせる作業を人の手で行っていた。日本では人件費が高く実際に機械化されている作業だが、ジャージ生地のような伸縮性のある生地では機械ではずれが出来てしまい、人の手で行うほうがより正確だそうだ。別の縫製工場ではパターンの線引きを人の手で行っていた。パーツ同士が接するラインは機械ではそれぞれの形として認識して描くので2本になるが、手描きであれば1本で済むため、人の手で描いた方が実は綺麗だそうだ。織工場では、横糸を織ることは完全に機械化されていたが、たて糸の模様を作る作業を人の手で行っていた。たて糸の作業も機械化すれば時間短縮になるのではないかと考えたが、デザインが多岐に渡り、そのたびにコンピューターでは変更、調整をしなければならないことからコストもかかり、またミスも多くなる、と回答をもらった。人間の方が柔軟に対応でき、またミスも少ないということは意外なことでもあった。
実際に工場を見学する中で、機械化された作業と人の手による作業が混在していることを発見した。機械やコンピューターは万能というわけでもなく、作業によっては人の手による方がミスも少なく、正確にできることがある。今後もっと技術レベルが上がれば、更に機械化される作業は増えるかもしれないが、その場や扱うもの、状況に合わせて人の手で判断することが大事だと感じた。

着用者のことを考える、ということ。

 着用者のことを考えるということについても学びを得ることが出来た。ユニフォームという作業時に着用する衣類では特に、デザイン性や着心地だけを求めればいいものではない。毎日のように着用し、そしてクリーニングされるということを考えれば、強度も重要である。織工場では、そのような強度を高めるために、糸が研究されていた。糸も同じではなく、一本の糸のなかのフィルムを増やすことや、強くねじる事で糸そのものの強度を高めて、生機を作っていた。ユニフォームがどのような場面で着用されるのかを考え、それが糸の目に見えないような細かいフィルムにまで及んでいるということは驚きであった。

 また、染色工場では、顧客から受け取った色見本を再現出来るように、染料を計算して作り、試作として染め上げをしていた。その試作が色見本の色と同じ色かどうかは、人の目で見て判断する。それも事務所の中で見比べるのではなく、外部からの光が遮断された部屋の中で、任意の光を当て、そこでどう見えるか判断していた。任意の光とは、自然光・蛍光ランプ・白熱ランプなどで、これらはそれぞれ分光分布が異なり、よって色の見え方に大きな影響を与える。ここで重要なことは、そのユニフォームがどこで着用されるのか、ということである。着用者が屋外で着用するのであれば、屋外でユニフォームの色がどのように視認されるのかを考えなければならないし、屋内であってもランプによっても見え方は異なる。

 着用者のことを考えたデザイン、ということは当たり前のようであるが、私のこれまでの考えでははるか及ばないような細部にまで、計算や配慮がなされているのだと感じた。今回の見学では、工場での機械や作業の用語や、アパレルの業界知識など自らの知識不足を痛感したが、「着用者のことを考える」ということについても、まだまだであったと思う。4月から、こうした知識をまず一つずつ学んでいき、本当に細部にまで着用者のことを考えることができるようになりたいと考える。

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